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マンションを売却する際には、適切な知識と準備が不可欠です。特に高値でスムーズに売却するには市場の動向を把握し、適切な不動産会社と契約し、戦略的に売却活動を進めることが重要です。
そこで、不動産売買の仲介営業やコンサルティングを40年経験してきた私が、賢いマンション売却のノウハウを詳しく解説します。
「どうすればいいかわからない」「一人で悩んでいる」そんな方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
マンション売却を始める前に知っておくべき基本知識
マンション売却を成功させるためには、まず基本知識を押さえておくことが重要です。ここでは売却のプロセス、必要な書類、売却の諸費用、手取り額を増やす税制特例の選択と利用について説明します。全体の流れやポイントを把握し、余裕を持って臨むことがマンション売却には大切です。
売却のプロセス
マンション売却には上記の図解のように以下のステップがあります。
- 査定依頼 : 複数の不動産会社に査定を依頼し、適正価格を確認する。
- 媒介契約 : 一般媒介、専任媒介、専属専任媒介の契約形態を選ぶ。
- 売却活動 : 広告や内覧を通じて買い手を探す。
- 契約締結 : 売却条件に合意後、正式な契約を締結する。
- 引き渡し : 買い手に物件を引き渡す。
- 確定申告 : 売却後の税制優遇策等の税務申告
それぞれの注意点については、次項以降に成功法則と合わせて詳細の説明をします。不動産売却は一生に何度もあるものではないですから、まずは全体の流れを掴んでください。
マンション売却に必要な書類
売却準備の参考書類として
☐登記簿謄本(法務局で取得可能)
☐固定資産税評価証明書(区役所で取得可能)
☐管理規約・修繕積立金明細(管理会社から取得)
☐間取り図・パンフレット(購入時のものがあれば活用)
☐リフォーム履歴の確認資料(実施していたら)
☐固定資産税納付書(毎年4月に区役所より通知有り//固都税の年額を決済引渡し時に買主と清算)
☐ローン残高証明書・返済償還表(金融機関等の抵当権設定者から取得可能)
売主証明書類として(決済時の所有権移転登記に必要)
☐身分証明書
☐印鑑証明書
☐権利証(登記識別情報)
☐(住所変更登記用)
☐抵当権抹消書類(金融機関等の抵当権設定者から取得)
確定申告に必要書類
☐購入・売却時の売買契約書
☐購入・売却時の仲介手数料領収書
☐リフォーム領収書(実施していたら)
売却の諸費用
☐仲介手数料 : 売却価格の3%+6万円+消費税(売買価格400万円超の場合)
☐譲渡所得税 : 利益が出た場合に課税される
☐抵当権抹消費用 : 住宅ローンが残っている場合は抵当権を抹消する費用が必要
手取り額を増やす税制特例の選択と利用
マンション売却時に譲渡益が発生すれば税金が発生しますが、不動産の所有期間により税率が大きく異なります。さらに特例を使うことで税金の支払い額を抑えることも可能なのでしっかり整理しておきましょう。
譲渡所得税
マンションを売り利益が発生すると、譲渡所得税がかかります。給与所得や事業所得とは課税方式が異なり、分離して計算されます。
譲渡所得税は、不動産の所有期間によって大きく税率が変わるため注意が必要です。
課税譲渡所得 = 譲渡価格 - 取得費 - 譲渡費用 - 特別控除 |
課税譲渡所得 × 所有期間に応じた一定の税率 |
短期譲渡所得所有期間5年未満 | 所得税30.63% (復興税含む)+ 住民税 9% = 39.63% |
長期譲渡所得所有期間5年超 | 所得税15.315%(復興税含む)+ 住民税 5% = 20.315% |
マイホームを売却した時の長期 譲渡の軽減税率の特例所有期間 10年超 | <6,000万円以下の部分>所得税10.21%+住民税4%=14.21% <6,000万円超の部分>所得税15.315%+ 住民税5%=20.315% |
上記の数式に合わせて、以下の例で実際の税金を把握してみましょう。
譲渡価格 7,000万円、取得費 4,000万円、譲渡費用 200万円、特別控除なし
短期譲渡所得所有期間4年の場合 | 譲渡価格 - 取得費 - 譲渡費用 - 特別控除 (7,000万円 - 4,000万円- 200万円)×39.63% =1,109.64万円 |
長期譲渡所得所有期間6年の場合 | 譲渡価格 - 取得費 - 譲渡費用 - 特別控除 (7,000万円 - 4,000万円- 200万円)×20.315% = 568.82万円 |
マイホームを売却した時の長期 譲渡の軽減税率の特例所有期間 11年の場合 | 譲渡価格 - 取得費 - 譲渡費用 - 特別控除 <6,000万円以下の部分> (6,000万円 - 4,000万円- 200万円)×14.21% = 255.78万円 <6,000万円超の部分> (7,000万円 - 6,000万円) ×20.315% = 203.15万円 255.78万円 +203.15万円=458.93万円 |
いかがでしょうか? 不動産の所有期間により税金の額がかなり変わり、手元に残る手取り額に大きな差異が生じます。マンション市況の活発さのみでなく、マンション所有期間の点においても売却時期のタイミングを図る必要があります。
マンション売却益に対する税制優遇
税制優遇には以下の2つの大きな特例があります。
- 3,000万円控除(居住用財産を譲渡した時の3,000万円特別控除の特例)
- 買い替え特例
それぞれについて解説します。
3,000万円控除(居住用財産を譲渡した時の3,000万円特別控除の特例)
マイホームを売った時に、所有期間にかかわらず譲渡所得から最大3,000万円控除できる制度です。
主な要件は以下の2点となります。
- 売却する家屋は(付随する土地も含む)は住んでいた家であること。以前住んでいた家を売る場合、住まなくなった日から3年を経過する日の属する12月31日までに売ること。
- 売却した年の前年および前々年に以下の税制優遇を受けていないこと。
①3,000万円控除(本制度)
②買い替え特例
③譲渡損失についての損益通算むおよび繰り越し控除
なお、さらに注意点としてはこの3,000万円控除を受けた場合には、買い替え先の新居で住宅ローン控除は利用できないということになります。
買い替え特例
所有・居住期間ともに10年を超えるマイホームを売却し、売却資金を買い替え先の住宅購入資金に充当した場合、譲渡益の課税を将来に繰延べできる制度です。
課税の繰延べと言われているものですが、わかりづらいので具体例をあげて説明します。
取得費1,000万円で購入したマイホームを10年超に5,000万円で売却し、その売却資金を買い替え先の新たな7,000万円のマイホームの購入資金に充当した場合の例となります。
購入取得費は1,000万円です。
10年超経過したマイホームを5,000万円で売却すると、通常は諸経費は別にして売れた5,000万円から取得した1,000万円の差益4,000万円に課税されます。
しかし、2,000万円の手持ち資金を出して新たな買い替え先の7,000万円のマイホーム購入資金に売却価格を全て充てれば、この買い替え特例の課税の繰延べ制度を利用してその際の譲渡所得課税はかからないとするものです。
ただし、課税の繰延べですからさらにその後に買い替えをする場合には、今回の課税繰延べ額の4,000万円も課税されることになります。
その際の売却額が8,000万円と仮定しますと、7,000万円だったマイホームが1,000万円高く売れ譲渡益が1,000万円となります。しかし、前回に繰延べ特例を利用して税金が課税されなかった4,000万円も含め、1,000万円+4,000万円の計5,000万円に対して一気に今回は課税されるということになります。
もう買い替えはしない、終の棲家にするなどの方針であれば、課税の繰延べ制度は利用メリットが大きいものですから判断材料のひとつとしてください。
なお、3,000万円特別控除と同様に、買い替え特例を受けた場合も買い替え先の新居で住宅ローン控除は利用できないことになりますので知っておきましょう。
高く売るための成功法則
マンションを少しでも高く売るためには、いくつかのポイントがあります。
- 相場を知る
- 売却時期の選定
- 不動産会社の選び方
- 内覧の工夫
- 売買契約の注意点
以下、それぞれについて解説します。
相場を知る
中古マンションの市況を把握し、売り時を判断する際に役立つマンションデータやグラフを提供している情報源をいくつか紹介します。これらは最新の市場動向や価格推移を視覚的に確認するのに有用です。
東京カンテイの「中古マンション70㎡価格推移」
東京カンテイは、三大都市圏(首都圏、近畿圏、中部圏)や主要都市別に中古マンションの70㎡換算価格の月次・年次推移をグラフで提供しています。例えば、首都圏の価格動向や東京23区の詳細なデータが含まれ、築年数ごとの平均価格も参照可能です。これにより、地域ごとのトレンドや価格の変動が把握しやすく、売り時のタイミングを見極める手助けとなります。
参考 : 東京カンテイ プレスリリース/中古マンション価格「三大都市圏・主要都市別/中古マンション70㎡価格月別推移」2025年3月24日
URL https://www.kantei.ne.jp/wp-content/uploads/c202502.pdf
東日本不動産流通機構(REINS)の「マーケットウォッチ」
REINS(レインズ)では、首都圏の中古マンションの成約価格や㎡単価、在庫件数の推移をグラフ化したデータを公開しています。特に「年報マーケットウォッチ」や月次レポートでは、過去数年の価格上昇傾向や取引件数の増減が確認でき、市場の需給バランスを分析するのに役立ちます。
参考 : 東日本不動産流通機構(REINS)「レインズデータライブラリー 月例マーケットウォッチ」2025年2月度
URL http://www.reins.or.jp/library/2025.html
国土交通省の「不動産価格指数」
全国の不動産価格指数を基にしたグラフで、中古マンションの長期的な価格推移が確認できます。2010年を基準(100)とした指数で、地域別・物件種別ごとのトレンドが見られ、広範な視点で売り時を検討する際に有用です。
参考 : 国土交通省「不動産価格指数」2025年3月31日URL http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000085.html
NTTデータグループ会社(株式会社NTTデータ・ウィズ)が運営するHOME4U「マンションプライス」
マンションプライスは、メールアドレスで会員登録をするとマンション名を入力するだけで相場価格や、直近の相場の推移状況を確認できます。同一のマンションや近隣のマンション動向がダイレクトでわかるのでとても参考になるデータです。
参考 : 株式会社NTTデータ・ウィズ HOME4U「マンションプライス」
URL https://www.home4u.jp/sell/mansion/
これらのデータを利用する際は、以下のポイントを考慮するとより効果的です。
地域別動向 : 自分のマンションがあるエリアの価格推移に注目してみる。
築年数との関係 : 築浅物件と築古物件で価格変動のペースが異なるため、所有物件の築年数を踏まえて比較する。
需給バランス : 在庫件数が増加傾向なら供給過多で値下がりリスク、減少傾向なら需要が高く売り時と判断できる可能性があります。
これらの情報源を組み合わせることで、点ではなく線で市況を捉え、売り時の判断に活かせます。
最新のグラフ等は各機関のウェブサイトで定期的に更新されているので、確認してみてください。
売却時期や売却方法の選定
マンション売却を検討しているということは、何らかの動機があるはずです。
住み替えや住宅ローンの返済が厳しい、転勤、結婚、離婚、相続等々、各人各様の売却理由や要因があります。その目的により売却時期や売却方法の選定も異なるでしょう。
ここでは売却理由による最適な売却時期や売却方法の選定について考えてみます。
ただ全ての場合に言えることは、一般的にまずは先に調べた相場動向によりマンション市場が活発なタイミングを狙って、売り時を逃さないことが大切です。
たとえば、低金利で住宅ローンが借りやすければ全般的に購入意欲が高まっていき、新築分譲マンションの供給量が減っていれば中古マンションのニーズが高まり増加していくことなどです。マクロ的なマンション市況を把握し、判断材料にしてください。
年間行事サイクルの購入ニーズに合わせた売却
季節的には、子どもの入学卒業・新年度新学期、転勤など4月の新生活に向けたタイミングでの購入ニーズの大きな山が例年あります。そのために2~3月に合わせた売却をしたいのであれば、10~12月の年末までに査定依頼や不動産会社の選定を済ませ、遅くとも年明けには売却をスタートする必要があります。
第二の山が、9月からの子どもの新学期に合わせた夏休み中の購入ニーズに合わせた売却です。そして第三の山が年明けからの生活に合わせた年末までの売却となります。
買い替えに合わせた売却
新築分譲や中古のマンション・一戸建に買い替える場合には、買い替え先を決定する前の先行売却か、購入買い替え物件が確定した段階で売りにかける必要が生じます。買い替え先が決まっている場合には、売却資金を充当するために売却活動する一定の売却期限や買い替え購入可能な最低売却価格の決定と判断が必要となります。
不動産会社の新築分譲物件であれば、その会社に仲介部門があれば、たとえば売却期間3ヶ月を経過した段階で未だ買い手が現れていなければ、その不動産会社が事前に提示していた下取り価格で買い取る買取り保証を入れる方法もあります。買い取り額は再販をする前提価格なので、相場の80%程度となります。最悪の場合の買取価格で資金繰りが合うかどうかをチェックする必要があるわけです。
買取り保証制度を要していない不動産会社の場合には、一般的な買取りを行っている買取り業者も多いので、その手当をしながら売却を図っていく方法があります。
買取価格は相場よりも低い価格となりますから、適正な相場に近い売り出し価格で仲介市場に売りに出し、販売状況の変化に応じ適宜価格を見直していく計画的な売却計画が必要となります。
不動産市況の悪い時期は、下取りではなく一定期間に仲介市場で売りに出し、期限を過ぎれば買い替え先の売買契約も白紙解約となる停止条件付の売買契約を締結する場合もあります。
ケースバイケースにより、不動産会社とよく相談されることをおすすめします。
即時、早期の売却ニーズに合わせた売却
なかには不動産流通マーケットに出さずに売却を済ませたいという希望の方もいらっしゃいます。売却に時間が取れない、個人の買主との売買では契約不適合責任(契約内容に適合しない品質を欠く瑕疵があった場合の売主責任)を負い補修や賠償をすることになったり、何らかのトラブル頻度の可能性が高くなるのを回避したい、室内に不要な残置物が多くあり処分の手間暇を省き明け渡したいなどの理由が主なものです。
不動産業者の買取りは、個人間売買ではないので個人間売買では必須の契約不適合責任条項を省いたり、残置物をそのまま明け渡すのを承諾条件としたり、再三の内覧立ち合いはせずに引き渡し時期も売主事情に合わせたりすることが可能です。
ただ買取り業者は再販をするための仕入れですから、当然に会社の利益を価格にのせますから、買取価格は相場の80%程度と安くなります。
不動産会社の選び方
不動産会社を選ぶにあたっては、数社の査定を通じてその会社や担当者の説明の仕方や納得性などを重視し、選ぶ方法が一番よいと思います。
査定には、机上査定と呼ばれる査定価格を電話やメール等の連絡だけで知らせてもらう方法や、実際に家を訪ねて来てもらう訪問査定があります。
訪問査定の場合には、不動産会社が査定報告書の資料を作成し持参し、査定の根拠や物件のメリット・デメリット、販売方法などを精一杯プレゼンテーションしてきます。
不安や不明なことは全てその担当者に尋ねてみてください。その上で、その会社の担当者の説明の仕方や納得性を重視し選びます。おそらく話しやすい、信頼できる、親身になってくれそう、任せて安心と思う担当者に好感を持つでしょう。それは相性の問題でもあります。
数社の数人の担当者に会うと、査定価格・販売方法・現在のマーケットの見方、営業としての姿勢、そして自分との相性など意外とよくわかるものです。
長い付き合いになりますから、こまめにコミュニケーションが取れる相手を選ぶことが肝心なのです。
媒介契約の選び方
媒介契約には、以下の3種類があります。
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
- 専属専任媒介契約
それぞれの特徴がよくわかるように表にしてみました。
【媒介契約の種類比較表】
契約種類 | 他社依頼 | 自己売却 | レインズ登録義務 | 販売活動報告 |
一般媒介契約 | 可能 | 可能 | なし | なし |
専任媒介契約 | 不可 | 可能 | 媒介契約締結後7日以内 | 2週間に1回 |
専属専任媒介契約 | 不可 | 不可 | 媒介契約締結後5日以内 | 1週間に1回 |
一般媒介契約
複数の不動産会社で売却活動をしたい場合に選びます。
複数の方がそれだけ情報が広がり、多くの買い手に検討してもらえると思いがちです。しかし、専任や専属専任の場合はレインズという業者間で情報交換をするネットワークに登録する義務が生じ、他社の営業も情報を知り買主とのマッチングを図りやすくしています。
一般媒介契約のデメリットは複数社に依頼する形態のために、不動産会社は成功報酬である仲介手数料を得られる保証がないため積極的な販売活動をしてもらえない可能性もあります。販売活動の報告義務もないので、売主からこまめに連絡を取り、進捗状況を確認しなければならないケースもあるでしょう。
専任媒介契約
不動産会社1社と契約を結びます。これは専属専任媒介契約と一緒ですが、こちらは自分で買い手を見つけられます。媒介契約締結後7日以内にレインズ登録義務が発生します。
売主への報告義務は2週間に1回で、専属専任媒介契約と比較すると不動産会社からの報告頻度義務は下がります。
専属専任媒介契約
仲介を行えるのは、この1社に限定される形態です。自分で買主を見つけても直接取引をすることはできません。媒介契約締結後5日以内にレインズへの登録義務が発生し、業者間に情報が行き渡ります。1社限定のため積極的な販売活動をしてもらえる可能性は高く、報告頻度義務も最も高くなっています。
手厚いサポートを望む場合には、一考です。
どれを選択したらよいかは迷うでしょうが、私は先に記した訪問査定での印象を最優先に選ばれたらよいと思います。
信頼できそうな会社の営業担当者が1名しかいなければ、専任か専属専任媒介契約を検討してみる。効果的かと思われる営業手法が異なる複数社、複数人の営業担当者がいれば、一般媒介契約を一考するなどです。
媒介契約はいずれの形態も最長3ヶ月で一旦、期限切れとなりますので、その段階で更新の有無も合わせての再検討が可能です。
内覧の工夫
マンション売却活動の大きなポイントとして、購入検討者が不動産会社同行のもとにマンション内に見学に来る内覧があります。
内覧者は資料を見るだけでなく、実際に時間を作り内覧に来るくらいですから、物件への関心があり購入意欲は高まっているはずです。
内覧で注意したいのは、第一印象が大事だということです。
まずは玄関の清潔な印象、特に奥さまの女性が気にするキッチンや水回り、粗大ごみの片づけや掃除は大切です。
換気やペットの臭いにも気を遣いたいです。自分のペットは可愛いので全く普段気にならないことでも、高額な資金を用意する購入者は神経質でデリケートになっています。
同様な理由で室内の照明をつけ明るくしておくことも、雰囲気作りに大切です。
新築のモデルハウスではないので、売りやすくするためにリフォームをするまでは必要がありません。リフォームを施してもそのかかった費用を価格に上積みすることもできませんし、色やデザイン等は各自各様の好みも強いものです。
場合によっては、ホームクリーニングを行う程度は必要かもしれません。
売主の対応や態度も成約率に大きな影響を及ぼします。
過度なサービスは不要ですが、来訪者の人数分のスリッパの準備をしておくとか、内覧者からの質問に答える丁寧な対応など、事前に不動産会社の担当者と打ち合わせをし準備しておくとスムーズに自然な対応ができます。
売買契約の注意点
売買契約締結に臨むにあたっての注意点、チェックポイントもありますので以下5点について解説します。
- 少額の手付金は避ける
- 融資特約の確認
- 引き渡しの段取り
- 付帯設備表や告知書は慎重に確認を
- 確定申告を忘れずに
少額の手付金は避ける
売買契約時に買主から売主へ手付金が授受されます。通常は売買価格の5~10%程度が一般的です。まれに契約を急ぐあまり買主が少ない金額しか用意できずに少額手付金で契約を行う場合がありますが、これは避けましょう。
手付金は、売買契約がキャンセルとなった場合の違約金の役割も果たします。手付金が少額であればある程、買主が売買契約をキャンセルしやすくなり契約進捗が不安定になります。
融資特約の確認
一般的には買主は自己資金と住宅ローンを借り入れて売買代金を工面しています。住宅ローンには、金融機関が融資の可否を審査する融資特約期限が売買契約書に設けられています。
融資実行が内定しませんと、売買契約は白紙となり買主から契約時に預かっていた手付金も返還義務が生じます。
よって売主は、買主の融資審査が通るまでは手付金を使わないようにしましょう。
引き渡しの段取り
住宅ローン審査が通り、残代金支払いと引き渡し日の日程が決まりましたら、引っ越しができるように準備をしましょう。引っ越しが引き渡しの時期に間に合わないと買主との大きなトラブルになります。
特に3月などは、引っ越し業者も繁忙期でなかなか手配が取れなくなることがあります。早めに見積もりを取り、日程を確保し、荷造りを済ませましょう。
付帯設備表や告知書は慎重に確認を
マンション売却では、売主が「付帯設備表」および「告知書」を作成し売買契約時に買主へ渡し報告する必要があります。
引き渡し後にこれらの書類に記載された内容に不備があると、買主からクレームがありトラブルへと発展してしまう恐れもあります。
付帯設備表とは、マンション設備の「有・無・撤去」および「不具合」を売主が記載する表の書面です。設備や建具に至るまで、細部の動作状況を確認してください。
たとえば、浴室や洗面所の鏡のくもり止めは普段は気にしていない機能かもしれませんが、知らない間に壊れている可能性もあります。動作確認をして壊れていれば、その旨を正直に記載してください。なければ「無」と記してください。
設備の不具合は、致命的なもの以外は直す必要はありません。そのままの状態を売主は宣言し買主が受け入れたのですから、引き渡し後に買主が修理やリフォームを行います。
「告知書」は物件が抱えている問題点(瑕疵)についての記載書類です。
瑕疵がある場合には買主に承諾して買ってもらうか、売主負担で修繕補修して買ってもらうかなどの相談となります。
自宅のことは、普段使用している売主が一番よくわかっているはずです。万一の場合もありますから、売主自身で改めて動作確認や状況を把握した上で、正確で正直な情報を「付帯設備表」や「告知書」に記載し、買主へ提供しておくことがマンション売却をスムーズに引き渡す大切なポイントです。
確定申告を忘れずに
税制特例の利用は、確定申告が要件です。
せっかくの予定していた税制特例の利用を逃したり、怠って延滞税や無申告加算税がかかってしまうケースもあるので、十分に注意してください。
特に3,000万円控除等で譲渡所得税がかからないことを知って安心してしまい、そのまま確定申告を忘れてしまうとあまりにも残念で後悔することとなります。
税金の額や利用できる優遇税制特例の把握は、売却検討段階での重要なプロセスですが、確定申告のゴールを済まさなければ金額が大きいだけに資金計画が大きく狂ってしまうので要注意です。
まとめ
この記事では、マンション売却の流れや諸費用、税金といった基本知識から、高く売るための成功法則として実務面でのコツや注意点をお示ししました。
ご覧いただき、マンション売却に必要な適切な知識と下準備を済ませ、高値でスムーズに売却するための市場動向を把握し、信頼できる不動産会社と契約をし、戦略的な売却活動を進められることを願っています。
不動産は「動かない資産」と書きますが、2023年のデータによると日本国内での中古マンションの成約件数は約72,000件と多く大きく動いています。
参考 : 公益財団法人不動産流通推進センター 「不動産業統計集 不動産流通 b売り物件成約報告件数の推移(年度)3不動産流通-12」
URL https://www.retpc.jp/chosa/tokei/
新築分譲マンションの供給量が減り中古マンションの流通取引量が増えてきている昨今、ぜひこの勢いに乗り、賢い売却ノウハウを駆使してマンション売却を成功させてください。