リード文
マンションの売却は、多くの方にとって一生に一度あるかないかの大きなライフイベントです。
特に「高値で、かつスムーズに」売却するためには、市場の動向を正確に把握し、信頼できる不動産会社を選び、戦略的に売却活動を進めることが不可欠です。
このブログ記事では、不動産売買の仲介営業やコンサルティングに40年以上携わってきた私が、その豊富な経験に基づいた「賢いマンション売却のノウハウ」を徹底解説します。
「何から手をつければいいのかわからない」「一人で悩みを抱えている」といった方は、ぜひ本記事を羅針盤として、理想のマンション売却を実現してください。
マンション売却の基本知識 : 成功への第一歩
マンション売却を成功させるには、まずそのプロセス全体を理解し、必要な準備を整えることが重要です。ここでは売却の流れ、必要書類、諸費用、そして手取り額を最大化するための税制特例について詳しく説明します。
全体の流れとポイントを把握し、計画的に売却を進めましょう。
売却のプロセス : 6つのステップで全体像を把握する
マンション売却は、上記の図解のように6つのステップで進行します。
- 査定依頼 : 複数の不動産会社に査定を依頼し、所有マンションの適正価格を把握します。
- 媒介契約 : 不動産会社と「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」のいずれの契約形態で売却を依頼します。
- 売却活動 : 不動産会社による広告活動や購入希望者の内覧を通じて、買い手を探します。
- 契約締結 : 売買条件について買い手と合意後、正式な売買契約を締結します。
- 引き渡し : 売買代金の残金決済後、買い手に物件を引き渡します。
- 確定申告 : 売却後の税制優遇措置を利用するため、所定の期間内に税務申告を行います。
不動産売却は頻繁に経験することではないからこそ、まずはこれらの全体像をしっかりと掴むことが肝心です。
マンション売却に必要な書類一覧 : スムーズな手続きのために

売却準備の参考書類
☐登記簿謄本 : 法務局で取得可能
☐固定資産税評価証明書 : 区役所で取得可能
☐管理規約・修繕積立金明細 : マンション管理会社から取得
☐間取り図・パンフレット : 購入時のものがあれば活用
☐リフォーム履歴の確認資料 : リフォームを実施した場合
☐固定資産税納付書 : 毎年4月に区役所より通知(決済・引き渡し時に買主と清算)
☐ローン残高証明書・返済償還表 : 金融機関等の抵当権設定者から取得可能
売主証明書類(決済時の所有権移転登記に必要)
☐身分証明書
☐印鑑証明書
☐権利証(登記識別情報)
☐(住民票・住民票附票・戸籍の附票・不在住 不在籍証明書):住所変更があった場合の住所変更登記用
☐抵当権抹消書類 : 住宅ローンが残っている場合、金融機関等の抵当権設定者から取得
確定申告に必要書類
☐購入・売却時の売買契約書
☐購入・売却時の仲介手数料領収書
☐リフォーム領収書 (リフォームを実施した場合)
マンション売却の諸費用 : 事前に把握しておくべきコスト
マンション売却には、以下のような諸費用がかかります。手取り額を計算する上で重要な要素となるため、事前に確認しておきましょう。
☐仲介手数料 : 売却価格の3%+6万円+消費税(売買価格400万円超の場合)
☐譲渡所得税 : マンション売却で利益が出た場合に課税されます
☐抵当権抹消費用 : 住宅ローンが残っている場合、抵当権を抹消するための費用
手取り額を増やす税制特例 : 賢く利用して税負担を軽減

マンション売却時に利益(譲渡益)が発生すると税金がかかりますが、その税率は不動産の所有期間によって大きく異なります。さらに、特例の税制特例を利用することで、税金の支払い額を大幅に抑えることが可能です。
譲渡所得税の計算と税率
譲渡所得税は、給与所得や事業所得とは異なり、分離して計算されます。
特に、不動産の所有期間によって税率が大きく変動することに注意が必要です。
課税譲渡所得 = 譲渡価格 - 取得費 - 譲渡費用 - 特別控除 |
譲渡所得税 = 課税譲渡所得 × 所有期間に応じた一定の税率 |
所有期間 | 所得税(復興税含む) | 住民税 | 合計税率 |
---|---|---|---|
5年以下(短期譲渡所得) | 30.63% | 9% | 39.63% |
5年超(長期譲渡所得) | 15.315% | 5% | 20.315% |
マイホームの長期譲渡軽減税率(10年超) | |||
6,000万円以下の部分 | 10.21% | 4% | 14.21% |
6,000万円超の部分 | 15.315% | 5% | 20.315% |
上記の数式に合わせて、以下の例で実際の税金を把握してみましょう。
譲渡価格 7,000万円、取得費 4,000万円、譲渡費用 200万円、特別控除なし
短期譲渡所得所有期間4年の場合 | 譲渡価格 - 取得費 - 譲渡費用 - 特別控除 (7,000万円 - 4,000万円- 200万円)×39.63% =1,109.64万円 |
長期譲渡所得所有期間6年の場合 | 譲渡価格 - 取得費 - 譲渡費用 - 特別控除 (7,000万円 - 4,000万円- 200万円)×20.315% = 568.82万円 |
マイホームを売却した時の長期 譲渡の軽減税率の特例所有期間 11年の場合 | 譲渡価格 - 取得費 - 譲渡費用 - 特別控除 <6,000万円以下の部分> (6,000万円 - 4,000万円- 200万円)×14.21% = 255.78万円 <6,000万円超の部分> (7,000万円 - 6,000万円) ×20.315% = 203.15万円 255.78万円 +203.15万円=458.93万円 |
いかがでしょうか? 不動産の所有期間によって税金の額が大きく変わり、手元に残る手取り額に大きな差が生じることがおわかりいただけるでしょう。マンションの市況だけでなく、所有期間の点からも売却時期を見極めることが重要です。
マンション売却益に対する2つの税制優遇
税制優遇には、以下の2つの大きな特例があります。
- 3,000万円控除(居住用財産を譲渡した時の3,000万円特別控除の特例)
- 買い替え特例
それぞれについて詳しく解説します。
3,000万円特別控除(居住用財産を譲渡した時の3,000万円特別控除の特例)
マイホームを売却した際に、所有期間にかかわらず譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。
主な要件は以下の2点です。
- 売却する家屋(付随する土地も含む)は、住んでいた家であること。以前住んでいた家を売る場合、住まなくなった日から3年を経過する日の属する12月31日までに売却すること。
- 売却した年の前年および前々年に以下の税制優遇を受けていないこと。
①3,000万円控除(本制度)
②買い替え特例
③譲渡損失についての損益通算むおよび繰り越し控除
【注意点】
この3,000万円控除を受けた場合、買い替え先の新居で住宅ローン控除は利用できません。ご自身の状況に合わせて、どちらが有利になるか慎重に検討しましょう。
買い替え特例
所有・居住期間ともに10年を超えるマイホームを売却し、売却資金を買い替え先の住宅購入資金に充当した場合、譲渡益の課税を将来に繰り延べできる制度です。
「課税の繰り延べ」という言葉はわかりにくいかもしれませんので、具体例をあげて説明します。
【具体例】
取得費1,000万円で購入したマイホームを10年超の所有期間で5,000万円で売却し、その売却資金を買い替え先の新たな7,000万円のマイホームの購入資金に充当した場合。
通常であれば、売却益4,000万円(5,000万円-1,000万円)に対して課税されます。
しかし、この特例を利用し、売却価格全額を買い替え先の購入資金に充てることで、その際の譲渡所得税はかかりません。
ただし、これは「課税の繰り延べ」であるため、将来的にその買い替え先の物件を売却する際には、今回繰り延べた税額も合わせて課税されることになります。
たとえば、次に買い替えた物件を8,000万円で売却したと仮定します。
この場合、新居の譲渡益1,000万円(8,000万円-7,000万円)に加え、前回の繰り延べ額4,000万円も合算され、合計5,000万円に対して課税されることになります。
「もう買い替えはしない」「終の棲家にする」といった明確な方針がある場合には、この課税の繰り延べ制度は大きなメリットがあります。
ご自身のライフプランに合わせて、利用を検討する判断材料の一つとしてください。
【注意点】
3,000万円特別控除と同様に、買い替え特例を利用した場合も、買い替え先の新居で住宅ローン控除は利用できません。
高く売るための成功法則 : 実践で役立つノウハウ
マンションを少しでも高く売るためには、単に情報を集めるだけでなく、戦略的なアプローチが求められます。
ここでは、長年の経験から導き出した「高く売るための成功法則」を具体的に解説します。
- 相場を知る
- 売却時期や売却方法の選定
- 不動産会社の選び方
- 内覧の工夫
- 売買契約の注意点
以下、それぞれについて解説します。
相場を知る : 客観的なデータで「売り時」を見極める

中古マンションの市況を把握し、最適な「売り時」を判断するためには、信頼できるデータソースを活用することが重要です。以下の情報源は、最新の市場動向や価格推移を視覚的に確認するのに非常に有用です。
東京カンテイの「中古マンション70㎡価格推移」
三大都市圏(首都圏、近畿圏、中部圏)や主要都市別に、中古マンションの70㎡換算価格の月次・年次推移をグラフで提供しています。地域ごとのトレンドや価格変動が把握しやすく、売り時を見極める手助けとなります。
参考 : 東京カンテイ プレスリリース/中古マンション価格「三大都市圏・主要都市別/中古マンション70㎡価格月別推移」2025年3月24日
URL https://www.kantei.ne.jp/wp-content/uploads/c202502.pdf
東日本不動産流通機構(REINS)の「マーケットウォッチ」
首都圏の中古マンションの成約価格や㎡単価、在庫件数の推移をグラフ化したデータを公開しています。「年報マーケットウォッチ」や月次レポートは、過去数年の価格上昇傾向や取引件数の増減を確認でき、市場の需給バランスを分析するのに役立ちます。
参考 : 東日本不動産流通機構(REINS)「レインズデータライブラリー 月例マーケットウォッチ」2025年2月度
URL http://www.reins.or.jp/library/2025.html
国土交通省の「不動産価格指数」
全国の不動産価格指数を基にしたグラフで、中古マンションの長期的な価格推移が確認できます。
地域別・物件種別ごとのトレンドが見られ、広範な視点で売り時を検討する際に有用です。
参考 : 国土交通省「不動産価格指数」2025年3月31日URL http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000085.html
HOME4U「マンションプライス」(NTTデータグループ会社運営(株式会社NTTデータ・ウィズ)
メールアドレスで会員登録をすると、マンション名を入力するだけで相場価格や、直近の相場の推移状況を確認できます。同一のマンションや近隣のマンション動向がダイレクトにわかるため、非常に参考になります。
参考 : 株式会社NTTデータ・ウィズ HOME4U「マンションプライス」
URL https://www.home4u.jp/sell/mansion/
これらのデータを利用する際は、以下のポイントを考慮するとより効果的です。
- 地域別動向 : 自分のマンションがあるエリアの価格推移に注目しましょう。
- 築年数との関係 : 築浅物件と築古物件で価格変動のペースが異なるため、所有物件の築年数を踏まえて比較しましょう。
- 需給バランス : 在庫件数が増加傾向なら供給過多で値下がりリスク、減少傾向なら需要が高く売り時と判断できる可能性があります。
これらの情報源を組み合わせることで、点ではなく線で市況を捉え、売り時の判断に活かしましょう。
最新のグラフ等は各機関のウェブサイトで定期に更新されているので、定期的に確認することをおすすめします。
売却時期や売却方法の選定 : 目的に合わせた最適な戦略を
マンション売却を検討しているということは、住み替え、住宅ローン返済、転勤、結婚・離婚、相続など、何らかの動機があるはずです。
その目的によって、最適な売却時期や売却方法は異なります。
ただし、どのような場合でも、一般的にマンション市場が活発なタイミングを狙い、売り時を逃さないことが大切です。
たとえば、低金利で住宅ローンが借りやすければ全般的に購入意欲が高まり、新築分譲マンションの供給量が減れば中古マンションのニーズが増加する傾向にあります。
マクロ的なマンション市況を把握し、判断材料にしてください。
年間行事サイクルに合わせた売却
季節的には、子どもの入学・卒業、新年度・新学期、転勤など、4月の新生活に向けた購入ニーズが毎年大きなピークを迎えます。そのために2~3月に合わせた売却をしたいのであれば、10~12月の年末までに査定依頼や不動産会社の選定を済ませ、遅くとも年明けには売却をスタートする必要があります。
次いで、9月からの新学期に合わせた夏休み中の購入ニーズが第二のピークとなります。
そして、年明けからの生活に合わせた年末までの売却が第三のピークとなります。
買い替えに合わせた売却
新築分譲や中古のマンション・一戸建に買い替える場合は、買い替え先を決定する前の先行売却か、購入物件が確定した段階での売却が必要になります。
買い替え先が決まっている場合は、売却資金を充当するため、一定の売却期限や、買い替えに必要な最低売却価格の決定・判断が求められます。
不動産会社によっては、たとえば売却期間3ヶ月を経過しても買い手が見つからない場合、事前に提示していた下取り価格で買い取る「買取り保証」を付けてくれるケースもあります。
買い取り額は再販を前提とした価格のため、相場の80%程度となることが多いですが、最悪の場合の資金繰りを確認しておくことが重要です。
買取り保証制度がない不動産会社の場合でも、一般的な買取りを行っている専門業者も多いので、そうした手段も視野に入れながら売却を図る方法があります。
買取価格は相場よりも低くなるため、まずは適正な相場に近い売り出し価格で仲介市場に売りに出し、販売状況の変化に応じて適宜価格を見直していく計画的な売却プランを立てることが必要です。
不動産市況が悪い時期は、下取りではなく一定期間仲介市場で売りに出し、期限を過ぎれば買い替え先の売買契約も白紙解約となる「停止条件付きの売買契約」を締結するケースもあります。
ケースバイケースで最適な方法は異なりますので、不動産会社とよく相談されることを強くおすすめします。
即時・早期の売却ニーズに合わせた売却
中には不動産流通マーケットに出さずに売却を済ませたいという方もいらっしゃいます。売却に時間が取れない、個人間の売買で契約不適合責任(契約内容に適合しない品質を欠く瑕疵があった場合の売主責任)を負うリスクやトラブルを回避したい、室内に不要な残置物が多く処分の手間を省きたい、といった理由が主なものです。
不動産業者への買取りは、個人間売買ではないため、個人間売買では必須となる契約不適合責任条項を省いたり、残置物をそのまま明け渡すことを承諾条件としたり、再三の内覧立ち合いをせずに引き渡し時期も売主の事情に合わせたりすることが可能です。
ただし、買取り業者は再販のための仕入れであるため、当然会社の利益を価格に上乗せします。そのため、買取価格は相場の80%程度と安くなることを理解しておく必要があります。
不動産会社の選び方 : 信頼できるパートナーを見つける

不動産会社を選ぶ際には、複数の会社に査定を依頼し、その会社や担当者の説明の仕方、納得度などを比較検討する方法が最も効果的です。
査定には、電話やメールで概算価格を教えてもらう「机上査定」と、実際に家を訪問してもらう「訪問査定」があります。
訪問査定の場合、不動産会社は査定報告書を作成し、査定の根拠、物件のメリット・デメリット、具体的な販売方法などを丁寧にプレゼンテーションしてくれます。
この際、不安や不明な点は、全て担当者に質問してみましょう。その上で、担当者の説明の仕方、納得性、そして何よりも「話しやすさ」「信頼できるか」「親身になってくれるか」「任せて安心か」といった点を重視して選びます。これは相性の問題でもあります。
数社の数人の担当者に会うと、査定価格、販売方法、現在のマーケットの見方、営業としての姿勢、そしてご自身との自分との相性など、多くのことが意外とよくわかります。
売却活動は不動産会社と二人三脚で進めるため、こまめにコミュニケーションが取れる相手を選ぶことが肝心です。
媒介契約の選び方 : 3種類の契約形態を理解する
不動産会社と締結する媒介契約には、以下の3種類があります。
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
- 専属専任媒介契約
それぞれの特徴を理解し、ご自身の状況に合った契約形態を選びましょう。
【媒介契約の種類比較表】
契約種類 | 他社依頼 | 自己売却 | レインズ登録義務 | 販売活動報告 |
---|---|---|---|---|
一般媒介契約 | 可能 | 可能 | なし | なし |
専任媒介契約 | 不可 | 可能 | 媒介契約締結後 7日以内 | 2週間に1回 |
専属専任媒介契約 | 不可 | 不可 | 媒介契約締結後 5日以内 | 1週間に1回 |
一般媒介契約
複数の不動産会社に売却活動を依頼したい場合に選択します。「多くの会社に依頼すれば情報が広がり、買い手が見つかりやすい」と考えがちですが、デメリットもあります。
- デメリット : 複数社に依頼する形態のために、不動産会社は成功報酬である仲介手数料を得られる保証がないため、積極的な販売活動をしてもらえない可能性があります。また、販売活動の報告義務もないため、売主からこまめに連絡を取り、進捗状況を確認しなければならないケースもあります。
専任媒介契約
不動産会社1社と契約を結びます。専属専任媒介契約と同様に1社に限定されますが、こちらはご自身で買い手を見つけて直接取引することも可能です。
- レインズ登録義務 : 媒介契約締結後7日以内に「レインズ」と呼ばれる業者間情報交換ネットワークへの登録義務が発生します。
これにより、他の不動産会社の営業も情報を知り、買主とのマッチングを図りやすくなります。 - 売主への報告義務 : 2週間に1回4で、専属専任媒介契約と比較すると報告頻度の義務は下がります。
専属専任媒介契約
仲介を行えるのがこの1社に限定される形態です。ご自身で買主を見つけても直接取引をすることはできません。
- レインズ登録義務 : 媒介契約締結後5日以内にレインズの登録義務が発生し、業者間に情報が行き渡ります。
- 積極的な販売活動 : 1社に限定されるため、不動産会社は成功報酬を得られる可能性が高く、積極的な販売活動をしてもらえる可能性が高いです。
- 報告頻度義務 : 1週間に1回と、最も手厚いサポートと頻繁な報告が期待できます。
どの契約形態を選ぶべきか迷うかもしれませんが、私は先に述べた「訪問査定での印象」を最優先に選ぶのがよいと考えています。
信頼できそうな会社の営業担当者が1名しかいない場合は、専任か専属専任媒介契約を検討してみる。効果的かと思われる営業手法が異なる複数社や複数人の営業担当者がいれば、一般媒介契約を検討するなど、状況に応じて判断しましょう。
なお、いずれの媒介契約も最長3ヶ月で一旦、期限切れとなります。その段階で更新の有無も含めて再検討が可能です。
内覧の工夫 : 購入意欲を高める「第一印象」作り

マンション売却活動において、購入検討者が実際に物件を見学に来る「内覧」は非常に重要なステップです。
内覧者は資料を見るだけでなく、実際に時間を割いて来ているのですから、物件への関心があり、購入意欲は高まっているはずです。
内覧で特に注意したいのは、「第一印象」が非常に重要であるということです。
- 玄関の清潔さ : 玄関は物件の顔です。常に清潔に保ち、よい印象を与えましょう。
- 水回りの清潔さ : 特に奥さまが気にされるキッチンや浴室、洗面所などの水回りは、徹底した清掃が不可欠です。粗大ごみの片づけなども済ませておきましょう。
- 換気と消臭 : 換気を十分に行い、ペットの臭いなどがないか確認しましょう。ご自身のペットは可愛くても、高額な資金を準備する購入者は神経質になっていることがあります。
- 明るい雰囲気 : 室内の照明を全てつけ、明るい雰囲気を作ることも大切です。
- リフォームの必要性は? : 新築のモデルハウスではないので、売却のために大規模なリフォームをする必要はありません。リフォーム費用を価格に上乗せすることは難しいですし、色やデザインは個人の好みが大きく分かれます。場合によっては、ホームクリーニングを行う程度で十分かもしれません。
- 売主の対応 : 売主の対応や態度も成約率に大きな影響を及ぼします。過度なサービスは不要ですが、来訪者の人数分のスリッパを準備したり、内覧者からの質問に丁寧に答えたりと、事前に不動産会社の担当者と打ち合わせをして準備しておくとスムーズで自然な対応ができます。
売買契約の注意点 : トラブル回避のための最終確認
売買契約締結に臨むにあたっては、以下の5つの注意点とチェックポイントを必ず確認しましょう。
- 少額の手付金は避ける
- 融資特約の確認
- 引き渡しの段取り
- 付帯設備表や告知書は慎重に確認を
- 確定申告を忘れずに
少額の手付金は避ける
売買契約時に買主から売主へ手付金が授受されます。通常は売買価格の5~10%程度が一般的です。まれに契約を急ぐあまり買主が少ない金額しか用意できずに少額の手付金で契約を行うケースがありますが、これは避けるべきです。
手付金は、売買契約がキャンセルとなった場合の違約金の役割も果たします。手付金が少額であればある程、買主が売買契約をキャンセルしやすくなり、契約の進捗が不安定になる可能性があります。
融資特約の確認
一般的に買主は、自己資金と住宅ローンを借り入れて売買代金を工面しています。住宅ローンには、金融機関が融資の可否を審査する「融資特約期限」が売買契約書に設けられています。
融資実行が内定しないと、売買契約は白紙となり、買主から契約時に預かっていた手付金も返還義務が生じます。
したがって、売主は、買主の融資審査が通るまでは手付金を使わないようにしましょう。
引き渡しの段取り
住宅ローン審査が通り、残代金支払いと引き渡し日の日程が決まりましたら、速やかに引っ越しができるように準備を進めましょう。引っ越しが引き渡しの時期に間に合わないと、買主との大きなトラブルになります。
特に3月などは、引っ越し業者も繁忙期で手配が難しくなることがあります。早めに見積もりを取り、日程を確保し、荷造りを済ませておくことを強くおすすめします。

付帯設備表や告知書は慎重に確認を
マンション売却では、売主が「付帯設備表」および「告知書」を作成し、売買契約時に買主へ渡し報告する必要があります。
引き渡し後にこれらの書類に記載された内容に不備があると、買主からクレームがあり、トラブルへと発展してしまう恐れもあります。
- 付帯設備表 : マンション設備の「有・無・撤去」および「不具合」を売主が記載する書面です。設備や建具に至るまで、細部の動作状況を丁寧に確認してください。
たとえば、浴室や洗面所の鏡のくもり止め機能など、普段は気にしていない機能も、知らない間に壊れている可能性があります。
動作確認をして壊れていれば、その旨を正直に記載してください。なければ「無」と記しましょう。
設備の不具合は、致命的なもの以外は直す必要はありません。そのままの状態を売主が宣言し、買主が受け入れたのですから、引き渡し後に買主が修理やリフォームを行います。 - 告知書 : 物件が抱えている問題点(瑕疵)についての記載書類です。
瑕疵がある場合には買主に承諾して買ってもらうか、売主負担で修繕補修して買ってもらうかなどを相談することになります。
ご自宅のことは、普段使用している売主が一番よくわかっているはずです。
万一の場合に備え、売主自身で改めて動作確認や状況を把握した上で、正確で正直な情報を「付帯設備表」や「告知書」に記載し、買主へ提供しておくことが、マンション売却をスムーズに引き渡すための大切なポイントです。
確定申告を忘れずに
税制特例の利用は、確定申告が要件です。
せっかく利用できる予定だった税制特例を逃したり、確定申告を怠って延滞税や無申告加算税がかかってしまうケースもあるので、十分に注意してください。
特に3,000万円控除などで譲渡所得税がかからないことを知り、安心して確定申告を忘れてしまうと、後で大きな後悔につながります。
税金の額や利用できる優遇税制特例の把握は、売却検討段階での重要なプロセスですが、確定申告というゴールを済ませなければ、金額が大きいだけに資金計画が大きく狂ってしまうので要注意です。
まとめ : 賢いマンション売却で後悔のない選択を
この記事では、マンション売却の基本的な流れ、諸費用、税金といった知識から、不動産歴40年の経験に基づいた「高く売るための成功法則」として、実務面なコツや注意点をお伝えしました。
ご自身のマンション売却に必要な適切な知識と下準備を済ませ、市場動向を正確に把握し、信頼できる不動産会社と契約をし、戦略的な売却活動を進められることを心から願っています。
不動産は「動かない資産」と書きますが、2023年のデータによると日本国内での中古マンションの成約件数は約72,000件と、活発に取引が行われています。
参考 : 公益財団法人不動産流通推進センター 「不動産業統計集 不動産流通 b売り物件成約報告件数の推移(年度)3不動産流通-12」
URL https://www.retpc.jp/chosa/tokei/
新築分譲マンションの供給量が減り、中古マンションの流通取引量が増加傾向にある昨今、ぜひこの勢いに乗り、本記事で解説した賢い売却ノウハウを駆使して、あなたのマンション売却を成功させてください。